知的オフィス環境推進協議会の発足経緯

 知的オフィス環境コンソーシアムの理事会と知的照明システム推進協議会の運営委員会で半年に亘り議論を重ねて来ました結果、両団体を4月1日付けで統合し、新たに「知的オフィス環境推進協議会」として発足することになりました。

 知的オフィス環境コンソーシアムは、2006年12月に三井物産戦略研究所、株式会社日立製作所、松下電工株式会社、沖電気工業株式会社、おおび同志社大学が発起人となって設立し、2007年4月から1期3年を株式会社三井物産戦略研究所所長寺島実郎理事長の下で活動し、毎月の定例研究会やシンポジウムなどを行ってきました。また、三井物産戦略研究所と同志社大学が共同して、独立行政法人 NEDO技術開発機構の先導研究を実施し、東京ビルと六本木ヒルズ森タワーに導入した知的照明システムで大規模かつ長期間の実証実験を行ってきました。その後、2010年度からは名古屋大学大学院教授の西村 真先生に理事長をお引き受けいただき、第2期の活動を3年間行い、毎月の定例研究会のほか、300名を集めた学士会館でのシンポジウムを2回開催するなど、オフィス環境の新たな展開に関する幅広い活動を行ってきました。

 コンソーシアムの活動は今年度で6年目となりましたが、設立目的であるオフィス環境の新たな流れ、特に照明や空調の個別制御に関する先進的提案を関連学協会のみならず、多くの企業の皆さまにご理解いただき、次世代のオフィス空間に関して国内でも先駆的活動ができました。これもひとえに会員の皆さまの積極的なご指導とご協力の賜であり、厚くお礼を申し上げます。なお、現在の理事会員は沖電気工業株式会社、パナソニック株式会社、株式会社日立製作所、株式会社日建設計、アズビル株式会社、シャープ株式会社、三菱地所株式会社、および同志社大学です。

 一方、2011年度から開始した、三菱地所株式会社を代表とする独立行政法人 NEDO技術開発機構の実証研究に関して、知的照明システムを複数の企業の組合せで製造、販売、施工、および保守する必要性が生じ、それを核として知的照明システム推進協議会が2012年4月に設立されました。運営委員は、パナソニック株式会社、シャープ株式会社、三菱電機株式会社、株式会社関電工、株式会社九電工、株式会社セコニック、株式会社コンテック、ヤマギワ株式会社、株式会社アイピースクエア、株式会社スマートオフィス総合研究所、および同志社大学です。

 2012年4月には設立記念セミナーを学士会館で行い、「オフィスビルのイノベーションを考える、ビジネスの頭脳化を支えるオフィスビルのあるべき姿」というメインテーマで著名な先生方にご講演をお願いし、150名の参加者がありました。また、この協議会の活動がきっかけとなって東京急行電鉄株式会社二子玉川ライズオフィスカタリストBAに知的照明システムが導入されました。協議会ではこの会場を借りて見学と説明を兼ねたセミナーを多数回行い、また、知的オフィス環境コンソーシアムと共同開催で数回の研究会や見学会などを行ってきました。この間、不動産業界など、知的オフィス環境コンソーシアムより広い範囲の皆さまのご参加を得て、知的照明システムに関する普及活動を行ってきました。また、ほぼ毎月開催した運営委員会では、今後の知的照明システム関連のビジネスの進め方について活発な議論を行って来ました。

 知的オフィス環境コンソーシアムと知的照明システム推進協議会の活動は明確に分かれています。知的オフィス環境コンソーシアムはオフィスの環境を知的に変えよう、すなわち執務者の執務内容、好み、体調や、季節、時刻、あるいは天候などによって執務者ごとに照明環境や空調環境など、人の五感に関わる物理的環境を執務者ごとに個別最適化し、それによって執務者の知的創造能力を高め、知識社会で新たな価値を生み出す執務活動を効果的に推進し、同時に、大幅な省エネルギーと執務者のストレス・疲労軽減に役立つ技術の研究・開発を考える研究会活動が中心です。これに対して知的照明システム推進協議会は、知的照明システムに特化し、複数の企業の技術と製品・サービスで構成される先進的個別制御照明システムの研究・開発、設計、製造、販売、施工、保守、および普及活動を目的としています。

 しかしながら、これら両者の活動には共通部分が多く、かつ、会員も共通分野の企業が多く、両者の統合的活動は知的オフィス環境推進協議会設立当初から議論となっていました。

 実は、知的オフィス環境コンソーシアムの設立当時には、次世代の知的なオフィス環境を考える活動の中に、研究部会として知的照明システム研究部会を設置し、そこで現在の知的照明システム推進協議会が行う活動を実施することになっていました。ところが、2007年当時はとてもその研究部会を設置する状況ではありませんでした。すなわち、当時、オフィスの新たな照明・空調設備に関心はあっても、知的照明システムそのものの製造などに興味を示す企業はなく、ましてや知的照明システムが提供する個別照度・個別色温度の照明環境はオフィスには不適当ではないかとの疑念が、照明メーカー、照明関連業界、照明学会、オフィス業界、ビル業界、オフィスデザイナー、建築業界などに存在していました。いわば、知的照明システムは学会・業界のはみ出し者として見られていたのです。このため、知的オフィス環境コンソーシアムの中に知的照明システム研究部会を設置することができないまま現在に至りました。

 その後、知的照明システムが目指す執務者ごとの個別照度・色温度の照明環境が関連学協会や関連業界で認知され、一つの重要な試みとして認識され、すでに東京都内8カ所、博多に1カ所のオフィス内に知的照明システムが実験的に導入されてきました。また、知的照明システムの制御技術に対して2012年2月には日本ファシリティマネジメント推進協会の技術大賞を受賞し、さらに、三菱地所株式会社新丸ビルエコッツェリアに導入した知的照明システムに関連して進めた低炭素実証オフィスの研究・開発において内閣府産官学連携推進功労者として三菱地所株式会社および千葉大学のご担当者とともに私も環境大臣賞を受賞しました。学会・業界のはみ出し者であった知的照明システムがようやく社会で少し評価される段階になったことに関しては、知的オフィス環境コンソーシアムおよび知的オフィス環境推進協議会の会員の皆さまのご支援とご鞭撻のお陰であり、厚くお礼を申しあげますと共に、10年以上前から大学で細々と行ってきた基礎研究が文部科学省の学術フロンティア事業や知的クラスタ推進事業、そして独立行政法人NEDO技術開発機構の事前調査、先導研究、おおび実証研究と進み、ようやく社会で役立つところまで来たことに関して感慨深いものがあります。

 ところで、知的照明システムに特化して活動を進める知的照明システム推進協議会がなぜ知的オフィス環境コンソーシアムの研究部会として活動しなかったのか。その理由は、知的照明システム推進協議会の設立の経緯にあります。

 知的照明システム推進協議会は、2011年度から始まった独立行政法人 NEDO技術開発機構の実証研究「高機能省エネ型知的照明システムの研究開発」(代表:三菱地所株式会社)において本年5月に竣工するオフィスビルに知的照明システムを実用化第一号として設計、開発、施工、および保守するための企業組織を作るところからスタートしました。この組織は知的照明システムアライアンスと名付けられ、2011年秋から設立に向けて準備を行ってきました。設立準備に加わった企業は三菱地所株式会社、株式会社セコニック、株式会社コンテック、株式会社アイピースクエア、および同志社大学であり、そこに知的照明システムのための調光・調色型照明器具メーカーとしてシャープ株式会社、パナソニック株式会社、および三菱電機株式会社、および、施工と保守を行う株式会社九電工が加わり、それらの企業を核として知的照明システムアライアンスの設立に向けて準備を進めてきました。

 その過程で、知的照明システムがオープンアーキテクチャーであることから、このアライアンスをもっと拡大して、不動産業界、建設業界、建築・設計業界、および電気工事業界などの企業にご参加いただく方向になりました。すなわち、同志社大学方式の元祖”知的照明システム”を設計、製造、販売、施工、保守するのみでなく、各社がそれぞれ、知的照明に類似の商品を開発する共通基盤を作成し、かつ、それらの照明システムが目指す個別調光調色制御の有効性を不動産業界やオフィス設計業界、あるいは照明関連学協会やビル関連協会などにも広く認識していただき、共に、知的生産性や執務快適性の高く、省エネルギー効果が著しい次世代の照明システムの開発・普及を促進させる組織を設立する方向になり、2012年4月に知的照明システム推進協議会が設立されました。

 こうした経緯から、知的照明システム推進協議会は、広義の知的照明システムを設計、製造、販売、施工、および保守などを行うプロバイダー側と、そのシステムを採用し、オフィスビルに導入していただくユーザー側からなる幅広い、業界の垣根を越えた協議会となりました。このため、この協議会は、次世代の”賢い”照明システムを開発・普及させる特定の目的を持つ団体となりました。

 これらの経緯から考えられることは、知的照明システム推進協議会は、本来は知的オフィス環境コンソーシアムの研究部会として発足するのが合理的であったと思われますが、設立の動機が異なっていたために、独立した組織となってしまいました。しかし、両団体の活動を進めるうちに、知的オフィス環境コンソーシアムの理事会と、知的照明システム推進協議会の運営委員会では、独立して活動するメリットよりも、統合して活動するメリットの方が大きいとの議論が進み、本年2月に両団体の統合が議決され、名称を「知的照明システム推進協議会」とすることに決まりました。

 新たに発足する知的オフィス環境推進協議会での活動は、執務者の知的創造性を高め、疲労とストレスを軽減し、大幅な省エネルギーを実現するオフィスの環境を知的化するための方法を考える勉強会、セミナー、見学会などの活動と、同志社大学方式の知的照明システムの開発・普及と、各企業が開発する知的な照明システムに関する情報交換と普及の基盤作りを推進する専門部会の活動から構成されます。

 知的オフィス環境コンソーシアムおよび知的オフィス環境推進協議会の会員の皆さまには、これまで暖かいご支援と格別のご配慮を頂きましたことに関して、心からお礼を申し上げますと共に、新たな知的オフィス環境推進協議会への統合にご賛同賜り、引き続き新組織の会員としてご支援・ご指導を賜りますよう、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。